東京を生活拠点にしているなら東京メトロ To Meカードブログ:12 8 18
「背中を洗ってくれないか」
と、パパに言われた。
このパパというのは、実は妻のパパである。
おいらは一瞬戸惑ったが、
「え?!あっ!はいっ」
と言いながらタオルを構え、パパの背中にあてがった。
初めてパパの背中というものに触れた。
なんか丸っこくて大きくて、何だかゴツゴツしている。
上手に洗ってあげようと思えば思うほどうまくいかない。
タオルがねじれてしまう…
今度はパパがおいらの背中を洗ってくれるらしい。
おいらは静かにパパに背を向ける。
パパは、なんていうか、力加減を知らない。
すごく力強くて、体についている必要なものまで
洗い流されてしまいそうな感じ。
思わずおいらは、身をよじってしまった。
「すまん」パパは申し訳なさそうに、
「ムスコの背中を洗うのは難しいな」と言った…
おいらは物心のついたころから、
女手ひとつで育てられてきた。
我が家にパパがいないことを悲しがらなかったのは、
母の育てかたが上手だったからだと思う。
溢れんばかりの愛を注いでくれたので、
おいらはとても幸せだった。
とは言え
パパのことを思わなかった訳ではない。
ただ、そのときおいらがイメージするものは
どれも好感の持てないものばかりだった。
無口!ガンコ!厳しい!
正直、「パパは怖い」という印象しかなかった。
そんなおいらに父ができたのは、
おいらが結婚をしたからだ。
妻のパパは、おいらにとって不思議な存在だった。
格好なんてつけない。不器用だけどまっすぐ。褒められると照れ隠しする。
大きなお世話なことばかりする…
おいらは、パパというものに対する印象が
まるっきり変わった。